イヤイヤ期のあなたへ

どうしても やりたくないのを 

ぼくは しっているよ

なぜ むきあいたくないかも 

ぼくは わかるよ

だから ぼくは

きみがもっている イヤイヤの 

それいじょうの げきれつなかんじょうを

きみに ぶつけるよ

……それではきいて

『いやって いうけど』

うた:ちばたかなり

バタフライの指導 (2-4)P.5

 

長時間バタフライからみた一般児童に対するリカバリー指導~

_________
『指導の際の主なポイント』

①水泳は水を動かすスポーツ
②腕を主体としたクロール
③“うねり”は大きく、第2キックは蹴り幅を大きく
④リカバリーの軌道は水平にしない
⑤その他細かな部分は個々のオヨギに合わせてアドバイス
_________

③“うねり”は大きく、第2キックは蹴り幅を大きく

バタフライ選手の間で泳がれる“うねり”の小さなフラットバタフライではなく、非力で運動が苦手な子供は大きな“うねり”動作を意識すると蝶々を表現しやすくなります。小さなうねりに比べて大きなうねりにはいくつか利点がございます(*)。その一つがキック幅を得やすいという点です。特に体を持ち上げる際の第2キックのキック幅を得るために“うねり”を大きくしています。

この第2キックの幅を大きくするには第1キック後に背中をしっかりと反る必要があります。この反りがあるからこそ、第2キックのキック幅が大きくなります。第2キックについて書籍などでよく言われるポイントは「小さく鋭く素早いキック(*)」ですが、非力で運動神経が無い子供にはこのアドバイスでは到底「蝶々」を表現することは出来ません。これはスイミングスクールのコーチだった時になかなか「蝶々」を表現できない子供達をみていくうちに徐々に気付く事になります。
(*)書籍の読者である競泳選手に向けたアドバイスであって、どちらが優れているかという話しでは無く、目的や指導の対象者によって泳ぎ方が違うと思っています。

以下、対象の児童にバタフライを教える際の第2キックのポイントです。

(1)第2キックのポイント
・キック幅は大きく
・そのために第1キックのアップキックでしっかりめに体全体を反る
・両足で床に水流をぶつけるように
・なるべく長い時間水をとらえて床に押し込む

このなるべく長い時間というのは肩が水面上に出る時間をコンマ数秒でも長くするためです。「運動が出来ない部類に入る子供達」は肩の関節が固く素早い動作が苦手です。ゆったりとした腕の運びでも水面に着水せず前方に戻せるよう、なるべく長い時間水を動かします。

また、背中を反る動作については、算数で使う定規をイメージしてください。定規の端に消しゴムを乗せて指で圧をかけた後に素早く離すと消しゴムは遠くに飛んでいきます。このように体の中心部分の筋肉を伸び縮みさせるために「反る」動作が必要です。ただし、定規を大きくしならせすぎるとポキンと折れてしまいます。体を反らせる動作についてもやりすぎは禁物です。

最後に掻き始めのタイミングについて解説します。バタフライの第1キックは“くの字”になり、手先が下がって腰が上がります。その後「反る」動作となりますが、その際に手先は水面に近づきます。その手先が水面下5cm~10cmに位置した時が掻き始めとなります。

(これらの段階を踏まえてバタフライにおける「蝶々」の表現が上達すれば、うねりを徐々に小さくして抵抗の少ないオヨギを目指します。)


・・・つづく

『イタイ大人と、大人な子』

皆さんは日本の「三大科」をご存じだろうか。これを知らない方は日本の義務教育の内容を充分に修得していないと言える。出席しただけで学んだ気になってはいないだろうか?履修に重きを置く日本の教育の歪みである。

左記の「三大科」というのは「内科」「外科」「痛い痛いの飛んでいけ科」の3つを指す。何を隠そう私は「痛い痛いの飛んでいけ科」の先生である。誰からも評価されないので自ら宣言しておく、私は京都で一番の“痛い痛いの飛んでいけ科”の名医だ。

4年前にプールで幼児と着替えをしていた時のこと、その子が体勢を崩してロッカーに頭を打ち付けギャン泣きした事があった。ギャン泣きしたままサヨナラするのは寂しいので、私は全ての念をふり絞って「痛い痛いの飛んでいけ」を唱えた。すると、ものの30秒で幼児は泣き止んだ。

私はこの経験に味をしめて、幼児であろうが中学生であろうが、“痛い痛いの飛んでいけ”を何度も何度も繰り返す。ある一定の年齢を越えると全くハマらないどころか軽蔑の対象になるのがこの治療法だ。別の女子生徒からは、人差し指を唇に当てて「シーッ、恥ずかしいでしょ!皆に見られているよ!」とたしなめられるほどだ。それでもなお、摩擦熱で火が出るほどバカみたいに擦りまくっている。イタイ大人である。

ある日、小1のレッスンがあった。その生徒がプールに入った瞬間、苦悶に満ちた顔をしたのを私は見逃さなかった。丁寧に問診を行うと学校で膝小僧を擦りむいたとのこと。彼をプールサイドの診察台に座らせ例の呪文を唱えた。すると彼は大人が子供に向ける優しい笑みを私に向けながら“医者”の頭の上に手を置いた。「イタイイタイの飛んでいけ!」

千葉隆礼

 

バタフライの指導 (2-3)P.4


長時間バタフライからみた一般児童に対するリカバリー指導~

_________
『指導の際の主なポイント』

①水泳は水を動かすスポーツ
②腕を主体としたクロール
③“うねり”は大きく、第2キックは蹴り幅を大きく
④リカバリーの軌道は水平にしない
⑤その他細かな部分は個々のオヨギに合わせてアドバイス
_________

②腕を主体としたクロール

…バタフライで体を浮上させる際は、両腕両足を同時に動かして水流を床に送り、その反作用で体を持ち上げます。そこで、人間は腕と足のどちらが器用な動きが出来るか?と考えます。その、答えは「腕」であると思います。なぜならば日常生活において自由自在の動きをしているのが腕であり、泳いでいる時にその動きを目で確認することも出来ます。また、クロールを例にとると長距離を泳ぐ際はバタ足をあまり使わず、腕主体で泳いだ方が疲れにくくなります。以上を加味した場合、運動が苦手な子供がバタフライ25mを達成するには腕主体のバタフライ習得が必要だと感じています。

ただし、腕で水をとらえて強い水流を生み出すには、それが出来うる腕の動きと反復練習が必要になります。クロールの段階から先を見据えた内容の反復練習をすることで、バタフライの段階に到達した時、なるべくスムーズに理想の動きとなるよう下地をつくります。ビギナーの段階から応用を見据えた基礎を身につける、という事ですね。ですが、クロール習得の段階から腕動作のレベルを上げるために、必然的にバタ足に割く時間を削減する必要があります。私が与えられた時間は月2~4時間ですので、常に何を選択するかに迫られます。蝶々バタフライ攻略の為には限られた時間の中で適切な選択を行う必要があります。

最後に、この記事で対象となる子供は「腕の筋力はさほど期待できない」と考えたほうが良いでしょう。そこでキーポイントとなるのが腕の掻きと同時に動かす「第2キック」の存在です。これは次に説明します。

 


・・・つづく

 

バタフライの指導 (2-2)P.3

長時間バタフライからみた一般児童に対するリカバリー指導~

□2
『指導の際の主なポイント』

________
『指導の際の主なポイント』

①水泳は水を動かすスポーツ
②腕を主体としたクロール
③“うねり”は大きく、第2キックは蹴り幅を大きく
④リカバリーの軌道は水平にしない
⑤その他細かな部分は個々のオヨギに合わせてアドバイス
_________

以上は、私が「週1で水泳をする一般児童(※1)」に対して「水面上で両腕を前方に戻すバタフライ」の指導を行う際に意識している主なポイントです。さらに、それらについて深堀りしていきます。
(※1)どちらかというと非力で運動が苦手な小学高学年や3泳法を習得した小3・4年生を意識して書いています。

上の①と②に関しては最初の泳法(クロール)を習得する段階から意識させる部分です。つまりは心構えであったり考えの土台をつくる事と言えます。非力な子供にとって①②を省いた指導をしてしまうとバタフライの段階に到達した時にいつまで経っても「蝶々」が出来ず詰んでしまいます。臭みとりやアク抜きなどの下ごしらえをせずに料理をするようなものでしょう。

①水泳は水を動かすスポーツ

…クロールでは腕で水を捉えて、それを後方に送ると体は前に進みます。立ち泳ぎでは足裏で水を床に送ると体は浮き、さらにその状態で前方にも水を送ると後退していきます。つまり、「水泳は、水を送る方向と反対側に体が進みます」。

水を掻くと水流が発生します。水流が強ければ強いほど、進む勢いが増します。水慣れ指導で、指導者が腕で強烈な水流をつくり、それを生徒に当てます。それはまるで海岸に打ち寄せる波のようなインパクトを子供に与えます。波が子供の胸にググン!とぶつかり、それが脇の間や太ももに流れて「くすぐったい」。そのような体験を与え続けると、子供は水泳というスポーツの本質を少しずつ理解するようになります。

腕や足をガムシャラに動かすのではなく、捉えた水を後方に送れば前に進むのだよ…さらにその水流が強ければ強いほどに勢いよく進んでいくのだよ…水泳というスポーツの特徴(*)をビギナーの段階で伝え、その後の練習における心構えを築く必要があります。表題に水泳は水を動かすスポーツとありますが、言い換えると水泳は腕や足で水流をつくるスポーツとなります。
(*)水泳というスポーツの特徴及び、それぞれの泳法の特徴を伝えることは習得において有効的です。

バタフライで「蝶々」を表現するには体を浮上させる必要があります。いったい、体のどの部分まで浮上すれば良いのでしょうか。それは水を掻いた時に水面上に肩が出るまで(*)浮上する必要があります。この時、水面上にチラリと脇が出ていれば充分に肩が水面上に出たと言えるでしょう。脇まで浮上させるには先ほどの「水を送る方向と反対側に体が進む」…この考えを利用します。つまり、バタフライで浮上するには腕や足を使ってプールの床に向かって水を送る必要があります。これらを生徒が理解すれば、ガムシャラ力任せに泳ぐことは無くなり、腕や足で水を「どの程度の強さで」・「どの方向」に流すかという意識が生まれます。そうすると、生徒達は腕や足をつかってプールの床に水流をぶつけるように練習し、その積み重ねがやがて体を浮上させることにつながります。
(*)肩の柔軟性があれば、肩を出す必要性は低いかと思いますが、ここで想定しているのは広く「一般児童」です。柔軟性が無いこともを想定しています。


・・・つづく