水は「押し・引き」

 


ある曜日の定期レッスンの子供達は予定が崩壊するかしないかスレスレの危なっかしい元気な子供達ばかりが来ている。

例えばコチラがクロールの練習をしたいと思っていても、今まで教わってもいないカエルっぽいオヨギ突然を見せてきて

「ねぇねぇ、このオヨギで何m泳げるかやってみてもいいー?!」

とか

「(グループで)シンクロオヨギして友情度を計測してーー!!」

とか

「荒波の中をクロールで泳ぎたいから横から波をつくってよー!(これをサバイバルクロールと呼んでいる)」

など、自分の中の妄想を具現化しようとしたり、以前行った練習内容が気に入って何度も“おかわり”しようとする。こうなると一瞬で私の予定は狂って崩壊する。

計画を崩壊させてグッと引き込むと子供達は野生の魚のようにプールの中を動き回り僕を子供の世界に誘い込む。“ちばちゃん”はというと、まあ、これが楽しくて予定の崩壊も悪くはない…まんざらでもないってやつだ。

ある程度の時間を夢中になって過ごすと、今度は千葉先生が現れて計画の中にグッと連れ戻し課題の泳法を練習する。

こんな「押し・引き」を繰り返しながら子供達は新たに修得したテクニックを使い、再び遊びの世界に戻っていく。

・・・こういった事を4・5年繰り返した高学年生徒のマンツーマンレッスン。この子との水遊びは水面にビート板を浮かばせてその上にヘルパーやプルブイと言われる水泳の用具を積み木の様に高く積み上げる。もちろん立ち泳ぎをしながらだ。立ち泳ぎが不安定だと水面が波立ちたちまちに崩れてしまう。積み重ねていくと高さがでるので腕を目一杯水面上に上げる…浮力の恩恵を受けることが出来ず沈みそうになる…これがまた難しい。技術を習得した者のみが得ることが出来る“高尚な遊び”だ。2人の子供達はキャッキャッ言いながら遊び、気付いたら1時間をオーバーしている。

 

千葉隆礼