~長時間バタフライからみた一般児童に対するリカバリー指導~
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『指導の際の主なポイント』
①水泳は水を動かすスポーツ
②腕を主体としたクロール
③“うねり”は大きく、第2キックは蹴り幅を大きく
④リカバリーの軌道は水平にしない
⑤その他細かな部分は個々のオヨギに合わせてアドバイス
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③“うねり”は大きく、第2キックは蹴り幅を大きく
バタフライ選手の間で泳がれる“うねり”の小さなフラットバタフライではなく、非力で運動が苦手な子供は大きな“うねり”動作を意識すると蝶々を表現しやすくなります。小さなうねりに比べて大きなうねりにはいくつか利点がございます(*)。その一つがキック幅を得やすいという点です。特に体を持ち上げる際の第2キックのキック幅を得るために“うねり”を大きくしています。
この第2キックの幅を大きくするには第1キック後に背中をしっかりと反る必要があります。この反りがあるからこそ、第2キックのキック幅が大きくなります。第2キックについて書籍などでよく言われるポイントは「小さく鋭く素早いキック(*)」ですが、非力で運動神経が無い子供にはこのアドバイスでは到底「蝶々」を表現することは出来ません。これはスイミングスクールのコーチだった時になかなか「蝶々」を表現できない子供達をみていくうちに徐々に気付く事になります。
(*)書籍の読者である競泳選手に向けたアドバイスであって、どちらが優れているかという話しでは無く、目的や指導の対象者によって泳ぎ方が違うと思っています。
以下、対象の児童にバタフライを教える際の第2キックのポイントです。
(1)第2キックのポイント
・キック幅は大きく
・そのために第1キックのアップキックでしっかりめに体全体を反る
・両足で床に水流をぶつけるように
・なるべく長い時間水をとらえて床に押し込む
このなるべく長い時間というのは肩が水面上に出る時間をコンマ数秒でも長くするためです。「運動が出来ない部類に入る子供達」は肩の関節が固く素早い動作が苦手です。ゆったりとした腕の運びでも水面に着水せず前方に戻せるよう、なるべく長い時間水を動かします。
また、背中を反る動作については、算数で使う定規をイメージしてください。定規の端に消しゴムを乗せて指で圧をかけた後に素早く離すと消しゴムは遠くに飛んでいきます。このように体の中心部分の筋肉を伸び縮みさせるために「反る」動作が必要です。ただし、定規を大きくしならせすぎるとポキンと折れてしまいます。体を反らせる動作についてもやりすぎは禁物です。
最後に掻き始めのタイミングについて解説します。バタフライの第1キックは“くの字”になり、手先が下がって腰が上がります。その後「反る」動作となりますが、その際に手先は水面に近づきます。その手先が水面下5cm~10cmに位置した時が掻き始めとなります。
(これらの段階を踏まえてバタフライにおける「蝶々」の表現が上達すれば、うねりを徐々に小さくして抵抗の少ないオヨギを目指します。)
・・・つづく