バタフライの指導 (2-1)P.2

長時間バタフライからみた一般児童に対するリカバリー指導~

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『蝶々じゃなきゃ意味がない』

バタフライは体全体をうねらせる「イルカ」と、水面上で両腕を同時に前方に運ぶ「蝶々」が特徴のオヨギです。一般の児童にとって競泳競技規則に則ったバタフライ習得は至難の業で、他の泳法と比べると技術・パワーの両方を必要とします。特に、第1キックで腰を水面上に上げる「イルカ」と、水面上で両腕を前方に戻す「蝶々」を両立する“理想的なバタフライ”の習得は多くの練習時間を必要とします。

私の教室では月2~4時間の受講生が多く在籍しています。私の担当する生徒達は運動能力もバラバラで、スポーツ万能な子供から学校のクラスで運動が出来ない部類に入る子供まで様々です。スポーツ万能な子供においては見たままの動きをマネする能力を備えている子供が多く、さらに「蝶々」を表現する程よいパワーもあり、最低限のオヨギを習得する事において指導で悩むことはそれほどありません(※)。一方で、運動が出来ない部類に入る子供達を理想的なバタフライまで導くのは至難の業です。
(※)“出来る子”であっても、その子のもつ能力を如何に引き出すかなど、他の部分における悩みは常に抱えています。

 

話しを少し戻します。バタフライには「イルカ」「蝶々」のどちらの要素も必要になります。どちらも両立させるのが理想的ですが、先に申し上げた通り”両取り”となると難易度は跳ね上がります。私が指導する際は、第1キックで腰を水面上に上げる「イルカ」を後回しに、水面上で両腕を前方に戻す「蝶々」を優先します。理由は「蝶々」を上手く表現できているバタフライがカッコイイからです。えぇ、個人の感想です。不純な理由ですが、大人になっても泳ぎ続けてもらいたいと思っているので、他人に見られても恥ずかしくないオヨギを優先・選択した結果です。これは個人的な思想になりますが、バタフライという泳法名なので「蝶々じゃなきゃ意味がない」と思っています。

想像してみてください。 第1キックで腰を水面上に上げることに成功しているが、両肘がグニャリと曲がり水没しているバタフライを”うつくしい”とか”カッコイイ”と思えますか?腰は水面上に上がらずとも水面上で両腕を伸ばして前方に戻す事が出来ていれば泳法名:バタフライ(蝶々)を表現できていますし、蝶々のように”うつくしい”と私はそのように感じます。ですので、私がまず優先するのは如何にして水面上で両腕を前方に戻すかであり、後回しになるのは腰を水面上に上げる動作となります。もちろん最終的には競泳競技規則に則ったバタフライ習得を目指しますが、一般のキッズスイマーに競技におけるバタフライを求めるのは”目的違い”の様にも感じます。

水泳指導において私を悩ませるのは運動が出来ない部類に入る子供達に「水面上で両腕を前方に戻すバタフライ」=「蝶々」を習得させることです。長年水泳指導に携わってきましたが、この2年ほどで何となくこうすれば「蝶々」が出来るようになると、ぼんやり掴めた気がします。そのヒントは私が10年前に挑戦した6時間バタフライにありました。

私は6時間泳ぎ続けたバタフライを「長時間バタフライ」と呼んでいますが、それは必要最小限のパワーで泳ぎ続けます。最も長い距離で200m泳ぐ競泳バタフライとは目的が違います。目的が違うので泳ぎ方も異なります。この必要最小限のパワーで泳ぐ長時間バタフライは、非力な子供達へのバタフライ指導と親和性があります。

 

・・・つづく