イヤなものから逃げる。
それが幼児なのかもしれない。
私はあの手この手で水慣れが出来るように働きかける。イヤなものを別のものに「すり替える」「気をそらせる」…手段の1つだ。たくさんの手段を用いても上手くいかないのが幼児だ。全ての時間が歯痒い。
「お顔をつけて・・・ゴシゴシゴシゴシ、はい、平気!」
コレを歌にのせてやる。平気の部分でダブルピースのポーズだ。幼児はこのポーズをしたいがために顔つけもセットでしてくれるわけだ。
ある日、「家でたくさん練習してきたよー」と幼児が言う。じゃあ、練習の成果を見せてよ、というと顔つけをスルーして満面の笑みでダブルピースをするではないか
うん…そうじゃない。
頻繁にプールの水を飲んでしまう幼児がいる。とても苦しそうな表情をするのだが、私は教室の掟と称してプールの水を飲んだ後に「ごちそうさまでした」と言わせ“御決まり”にしている。何だか滑稽な“御決まり”をすることで苦しい気持ちが紛れる。
ある時、「せんせー。今日、ごちそうさまを21回も言えたよ!!」自慢げに言ってくるではないか
うん…そうじゃない。
力まかせでバタ足をする幼児。千葉理論を跳ね除け、野性の感覚だけで泳ごうとする。このまま放置したほうが本人にとって楽しいかもしれないが、ある段階で伸び悩む時期が来る。野性児にあの手この手で技術を教え込み、効率良く進むようになった。
「ホント、キミってバタ足上手くなったねぇ」
安易な褒め方だった。
「うん、僕ね。上手になったから、もうバタ足しなくてもイイんだ。じゃあね。」
うん…そうじゃない。
千葉隆礼