水中ジャンプのお話です。
特にまだ泳げないお子様にとって、水中ジャンプはそれだけが出来ていても実用的とは言い切れません。シリーズ第2話の動作目的でお話をしましたが、「安全の確保」が出来ていないと水への恐怖心や不安感を完全に拭えないでしょう。
マンツーマン指導でしたら指導者が付きっきりなので安全を確保しやすいですが、スイミングスクールでの集団指導でしたらそうはいきません。安全を確保しないといけないし…練習量を確保しないといけないし…そのような時に水中ジャンプが難なく出来ていると、例えクロールの練習で息継ぎに失敗し水を飲んで溺れそうになっても、そこから水中ジャンプをしながらコースロープにつかまったり、プールフロア台に乗ったり、プールサイドにつかまったり…“自分で安全の確保をする”という事が出来るようになります。指導者に頼らず自分で安全を確保できると、指導者がすぐ傍で見る必要が無くなるので(*2)、練習量を多く確保出来るようになります。
*上記はプールの床に足がつかない子を想定しています。
*2:すぐ傍にいる必要度合いが下がる。ただし安全面のため目視は必要。
泳ぐ練習をしていて自分の身に危険を感じたら水中ジャンプに泳ぎを変えてコースロープにつかまるなどして安全を確保する…この安全の確保の為には、「水中ジャンプが安定して出来る」に加えてもうひとつ習得しておきたい動作があります。それはクロールなどの「水平姿勢」から水中ジャンプの「垂直姿勢」へ泳ぎを変化させることです。身の危険を感じたらその場でクロール姿勢から水中ジャンプへ泳ぎを変えることが、自分で安全を確保することにつながります。
*上記はクロールが満足に泳げない子を想定
では、そんな時を想定してあらかじめ練習をしておきましょう。まずは、けのびの状態でバタ足をしてある程度進んだらそのまま水中ジャンプに泳ぎを変えます。泳ぎを変えたらそのまま何度か水中ジャンプを行った後、けのびバタ足に泳ぎを変えます(下図)。
上の図で言うと、最初はけのび状態でバタ足をしています。ちょうど「変身」のところで 水中ジャンプに泳ぎを変えます。
クロール習得中のお子さんが練習中に身の危険を感じたとしましょう(ゴーグルに水が入る、水を飲むなど・・・)。その時に水中ジャンプに「変身」してコースロープなどにつかまります。そのままクロールでロープまで行こうとすると、まだクロールに慣れていないからか体が硬直してコースロープに達するまで時間を要します。また、その場で水中ジャンプをすると、すぐに呼吸が出来るという利点があります。
*プールの床に足がつかない子を想定しています。
上図は水中ジャンプが出来ていればすんなりと出来る子もいると思いますが、泳ぎを変化させるところが少し難しいです。「変身」でけのびから水中ジャンプに変わる時は、けのびで前方にのばした両手で水を押さえるようにしながら顔を前方に上げ、息継ぎをしてから水中ジャンプに入るとスムーズにいくでしょう。
慣れるまでは指導者が付きっきりで練習を見たほうが良いでしょう。スイミングスクールに通っているが水中ジャンプがなかなか合格しないというお話をチラホラ聞きます。ぜひ、お父さん お母さんはお休みの日でもお子さんを連れて近くのプールへ練習をしに行かれてはどうでしょうか?
(短い期間で出来るようになりたければ、自主練をする。これは勉強と同じです)
上図の「変身」のところで、子供には「チェンジ!!」とかロボット映画の「トランスフォーム!!」…などと言って遊んでいます♪ また、変身ポーズなんかすると子供は喜びます。(男の子は仮面ライダー、女の子はお化粧など)
子供は全力で子供っぽく振る舞う大人を受け入れます。ただし、中途半端に周りの目を気にしたり恥じらいがあるとたちまち冷めてしまいます。水嫌いの子供がプールで楽しく練習するには付き添いの大人が全力で童心に返る必要があります。もちろん童心に返るのは自然な演技であり、言い換えると指導技術である必要があります。時には鬼になり時にはピエロになり・・・安全管理という冷静な意識は残したまま・・・。
千葉 隆礼