「ラク」は「欲」を生む 

 〜1000m遠泳の小学生たち〜

 

  
***以下は、週1で通う生徒の実話をもとにした会話です***


「なぁ〜。ママー。今日、せんメートル泳げてん!♪」
「はぁ!?何言ってんのぉ。何かの間違いちゃうん(笑)あんたぁ、ひゃくメートルと間違えてへん?!」
「ほんまやってー!45分位連続で泳いでんでぇ。」
「ウソやん!45分って…どれくらいの時間かわかってんのぉ!?そんなワケあらへんで〜(笑)ゼロ1個多いやろー(笑)」


…… 一週間後 ……


「せんせー。ママがなぁ。ひゃくメートルの間違いやろって、信じてくれへんねん。せんせーからも言っといてよー!」 
 我が子の成長に耳を疑うような…驚くような成長を…それが私のテーマでもあります。


 私(千葉)の定期レッスンの指導方針は体力向上よりも技術習得が優先です。理由は非常に簡単。週1回1時間の練習で体力を上げるには時間が足りないからです。体力向上には、毎日学校の休み時間には外で遊ぶとか週数回運動をするとか…そのような習慣が必要です。また、毎週のようにガンガン泳がされるだけでは水泳の楽しさも理解できないでしょう。


 もちろん技術的な練習をして子供たちは「水泳って楽しい!」とはなりません。水泳を楽しめるようになるにはどのようにすれば良いでしょうか?私はしばしば子供たちの前でおフザケします。
「千葉先生って、おもしろい!」
…これは表面的な楽しさです。それは時として必要ですが、水泳の本質的な楽しさではありません。水泳はプールという非日常の世界で運動します。潜って浮いてフワフワと…まるで宇宙遊泳みたい☆でも、残念ながらこのレベルに到達するには訓練が必要です。訓練を乗り越え、技術を習得した者が晴れて「非日常的な」楽しさを味わえるのです。なわとび・逆上がり・器械体操と同じく、訓練して技術を得た者だけが本質を楽しめる世界…教育的にも意味があるからこそ学校で水泳が採用されているのではないでしょうか。


 技術?!…え?ちょっと待ってよ!体力がついたから1000mも泳げたんじゃないの?・・・そんなことはありません。皆さん、遠泳1000m泳ぐのに何分かかると思いますか?…小学生でだいたい40〜60分弱かかります。学校のマラソンで10分程度しか走っていない子供たちが果たして体力勝負で50分前後も泳ぎ続けることが出来るでしょうか?しかも1000m泳ぎきったお子さんはほとんどが週1通いの水泳歴1〜4年目ですし、なかには小1のお子さんもおられます。週1回1時間と限られた時間の中、体力勝負で1000mを泳ぎきるのは不可能に近いことです。


 私の生徒たちが1000m泳げたのはタネがあります。それは常に「どのようにしたら最小の力で泳げるか」ということに焦点を当てて練習したからです(4泳法習得までの期間)。呼吸の吐き加減・吸い加減はどのくらいか?バタ足のテンポは?力の加減は?腕主体で泳ぐ?スピードはどのくらい?上手く泳げているように見えるのに息があがるのは何で?……クロールの運動負荷がゆっくりジョギング程度になるよう練習するわけです。


あなたは「辛くシンドい」ことよりも「ラク」が好きでしょう?

私もです。


 上述の「最小の力で泳ぐの為の練習」をするというのは、言い換えると「ラクを選べるように練習」するのです。子供たちは練習を重ねる中で徐々に「ラクすること」が出来るようになります。
「せんせー。息つぎじゃない時にバタ足ゆるくしたらシンドなかった☆」
「ブクブクを弱めたら苦しくなかった♪」
「コーチ!苦しくなったら泳ぎながらめっちゃスピード緩めんねん。ほな、泳ぎながらだんだん体力回復していくねん。これ、”回復クロール”ってワザの名前にするわ☆」
…このように私の教室では体力を上げて1000m遠泳を攻略するのではなくラクに泳ぐための「技術」を身につけて1000m遠泳を攻略していきます。


 「ラクに」が出来るようになったら長い距離を連続で泳げるようになります。今日は50m、次の月は100m、さらに数カ月後には数百メートル泳げるようになります。…不思議なもので「ラク」をするために練習をしてきたのに、子供たちは欲が出てきます。

「ボクって・・・ワタシって・・・いったい何m泳げるんやろ!?」


 このあたりまでくると自信を持った表情で泳ぐようになります。以前までは「50m泳いでみようか?」というと「え〜っ!」という表情をしていましたが、今は「ラク」が出来ますから苦ではありません。だいたい連続で500m泳げるようになると「何m泳げるかやってみる!挑戦してみる!」と言い出す生徒もいます。とても嬉しいことです。ですが、残念ながら生徒全員がこんな自発的向上心を持っているわけではありません。1000mクロールというのは40〜60分連続で泳ぎ続けるわけですし、こちらも強制するわけにはいきません。「何m泳げるか限界に挑戦してみないか?1000mいけば大したもんだけどなぁ…」そんな感じで促してみます。私がこのように促すのは「ラクに」泳げる技術をもった生徒に対してのみです。子供たちは「ラク」をしたいと思う一方、「自分はどこまで出来るのだろう」という未知なるものに挑戦する冒険心も併せ持っています。断る生徒はほぼいません。少人数の個別指導ながら5年間で30人以上も1000m遠泳を達成したのには、技術習得を優先して練習してきたのと子供たちの心の奥底の「まだ見ぬ自分を見てみたい」「限界に挑戦したい」という気持ちがあったからです。


 1000m遠泳を達成した子供たちのほとんどが「親の水泳レベルを超える」ことになります。あなたは親超えを果たしたお子さんの達成感に満ち溢れた笑顔を見たことはありますか?

 

水泳 個別指導教室

京都 滋賀

代表 千葉隆礼