バタフライの指導 (2-6)P.7

長時間バタフライからみた一般児童に対するリカバリー指導~

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『指導の際の主なポイント』

①水泳は水を動かすスポーツ
②腕を主体としたクロール
③“うねり”は大きく、第2キックは蹴り幅を大きく
④リカバリーの軌道は水平にしない
⑤その他細かな部分は個々のオヨギに合わせてアドバイス
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⑤その他…個々のオヨギに合わせてアドバイス


①~④だけではバタフライにおける「蝶々」の表現が出来ないケースもあります。その場合は個々のオヨギを見ながらそれぞれの泳者に向けたアドバイスが必要になります。以下、代表的なものを挙げてみました。

(1)肩が水面上に出てから、肘や手先を水面上に

練習生はどうしても「両腕を水面上に」と強く思ってしまいがちです。体全体が水没している状態で両腕上げようとすると水を上方に掻き上げる動作となり、体は逆に沈んでしまいます。肩が水面上に出てから(脇が水面まで浮上してから)→肘→手先 と抜く事で“浮上する勢い”を失わずにリカバリーが出来るようになります。肩→→肘→手先…ちょっとしたタイミングの差をつくるイメージです。

(2)第2キックは蹴り幅を得て、それを押し込むように(跳ね上げない)

前述の③において「“うねり”は大きく」と申し上げましたが、この大きな“うねり”ができると第2キックのキック幅を得ることが出来ます。キック幅が大きいと水を動かす時間を充分に得ることが出来ます。水を動かしている時間が長いほど体が浮上する時間を充分にとれます。

ただし、注意が必要です。この第2キックの際に両足を下方に打ち込んだところから(バタ足の様に)直ぐに跳ね上げてしまうと、水を上方に蹴り上げる動きとなります。体は水を動かした方向とは反対側に動くため、蹴り下ろした直後に蹴り上げる動作を行うとリカバリー中に体が沈んでしまいます。つまり第2キックでは「キック幅を大きくとり、さらに下方へ押し込む」。蹴り下ろした最下部分で両足を0.3~0.5秒位とどめるとリカバリーを行うために必要な”肩が水面上に上がる”動作を得る事となり、バタフライにおける”蝶々”を表現しやすくなります。

(3)掻き動作は加速させる

掻き動作は腕全体で水を充分に捉えながら行う必要があります。この動作が上達すると腕全体に水の重みを感じるようになります。この水の重みを感じながら掻く事ができると体は反作用を得て水面上に上がってきます。しかし、ここで油断してはいけません。体(頭や肩)が水面上に出ると、今度は重力の影響で体はプールの底へ沈もうとします。両腕を水面に触れずリカバリーを行うためには、掻いて水面上に持ち上げた体が(特に肩)沈む前に、水面下から腕全体を素早く抜く必要があります。ですので、バタフライの掻き動作は、キャッチ・プルでは水の重みを感じながら掻き、プッシュからフィニッシュ・抜き上げに向けて徐々に掻きの速度を上げるのが良いでしょう。

 

(4)両腕と両足のタイミング

ブログ:バタフライ 長距離・長時間 ~日記14~と類似内容となります。
http://swimschool.jp/2017/06/08/longdistancebutterfly14/

こちらでは一般児童のバタフライ指導についてのお話しですので、非力な子供に対する指導を想定する必要があります。つまり、腕・足のどちらかではなく、腕と足の両方の力を合わせて浮上を目指すケースもあると心づもりしなければいけません(※)。

(4)の表題にもどり、具体的には「腕の掻き始めからフィニッシュ」と、「第2キックの蹴りはじめから打ち下ろし」、それら両方の時間を合わせます。③でも述べていますが「小さく素早く鋭いキック」を行うと、比較的ゆったりと動く腕動作とのタイミングが合いません(腕の掻きの途中でキックが終わってしまう)。そこで、“うねり”を大きくし第2キックの蹴り幅を得ることでストロークとキックのタイミングがピッタリと合うようになります。
(※)②「腕を主体としたクロール」にあるように、どちらかというと足動作よりも腕動作に重点を置きます。具体的には「腕動作:足動作」=「6:4」あるいは「7:3」です。

 

・・・つづく

バタフライの指導 (2-5)P.6


長時間バタフライからみた一般児童に対するリカバリー指導~

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『指導の際の主なポイント』

①水泳は水を動かすスポーツ
②腕を主体としたクロール
③“うねり”は大きく、第2キックは蹴り幅を大きく
④リカバリーの軌道は水平にしない
⑤その他細かな部分は個々のオヨギに合わせてアドバイス
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④リカバリーの軌道

何度も繰り返しますが、この記事は「週1で水泳をする一般児童 」に対して「水面上で両腕を前方に戻すバタフライ」の指導について書いています。また、どちらかというと非力で運動が苦手な小学高学年や3泳法を習得した小3・4年生を意識しています。

対象となる児童達に適したリカバリーは一般的な“水面と並行に戻すリカバリー”では、浮上する勢いが充分で無いために、戻し動作の後半で腕が着水する恐れがあります。その途中着水を防ぐ為に、リカバリーは水面と並行ではなく、泳ぐ本人の額の上を目がけて「弧を描くように」リカバリー動作を行います。

また、本記事では“うねり”を大きくしますので、リカバリー前のストローク動作中に少し胸を張る姿勢(※)になります。この胸を張る動作中に鎖骨を斜め上方に向け(屋内プールなら前方の天井に向け)、その向きに合わせて腕の戻し動作を行います。このリカバリー動作中は正面の水面に戻すのでは無く、泳者本人の額に向かって「(横から見て)弧を描くように」リカバリー動作を行います。こうすることで、リカバリー中に重力で徐々に沈んでも両腕は途中着水しにくくなります。
(※)この記事では泳速に焦点を当てていません。ただし、胸の張りすぎは好ましくないです。最適な胸を張り方は個々の運動能力をみながら指導者が助言を行います。

このように、まずはリカバリー動作途中で両腕が水面に触れずに戻せるようになったら、競技選手の様に水平なリカバリー動作の習得を目指します。つまり、「段階を踏む」ということです。


・・・つづく

バタフライの指導 (2-4)P.5

 

長時間バタフライからみた一般児童に対するリカバリー指導~

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『指導の際の主なポイント』

①水泳は水を動かすスポーツ
②腕を主体としたクロール
③“うねり”は大きく、第2キックは蹴り幅を大きく
④リカバリーの軌道は水平にしない
⑤その他細かな部分は個々のオヨギに合わせてアドバイス
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③“うねり”は大きく、第2キックは蹴り幅を大きく

バタフライ選手の間で泳がれる“うねり”の小さなフラットバタフライではなく、非力で運動が苦手な子供は大きな“うねり”動作を意識すると蝶々を表現しやすくなります。小さなうねりに比べて大きなうねりにはいくつか利点がございます(*)。その一つがキック幅を得やすいという点です。特に体を持ち上げる際の第2キックのキック幅を得るために“うねり”を大きくしています。

この第2キックの幅を大きくするには第1キック後に背中をしっかりと反る必要があります。この反りがあるからこそ、第2キックのキック幅が大きくなります。第2キックについて書籍などでよく言われるポイントは「小さく鋭く素早いキック(*)」ですが、非力で運動神経が無い子供にはこのアドバイスでは到底「蝶々」を表現することは出来ません。これはスイミングスクールのコーチだった時になかなか「蝶々」を表現できない子供達をみていくうちに徐々に気付く事になります。
(*)書籍の読者である競泳選手に向けたアドバイスであって、どちらが優れているかという話しでは無く、目的や指導の対象者によって泳ぎ方が違うと思っています。

以下、対象の児童にバタフライを教える際の第2キックのポイントです。

(1)第2キックのポイント
・キック幅は大きく
・そのために第1キックのアップキックでしっかりめに体全体を反る
・両足で床に水流をぶつけるように
・なるべく長い時間水をとらえて床に押し込む

このなるべく長い時間というのは肩が水面上に出る時間をコンマ数秒でも長くするためです。「運動が出来ない部類に入る子供達」は肩の関節が固く素早い動作が苦手です。ゆったりとした腕の運びでも水面に着水せず前方に戻せるよう、なるべく長い時間水を動かします。

また、背中を反る動作については、算数で使う定規をイメージしてください。定規の端に消しゴムを乗せて指で圧をかけた後に素早く離すと消しゴムは遠くに飛んでいきます。このように体の中心部分の筋肉を伸び縮みさせるために「反る」動作が必要です。ただし、定規を大きくしならせすぎるとポキンと折れてしまいます。体を反らせる動作についてもやりすぎは禁物です。

最後に掻き始めのタイミングについて解説します。バタフライの第1キックは“くの字”になり、手先が下がって腰が上がります。その後「反る」動作となりますが、その際に手先は水面に近づきます。その手先が水面下5cm~10cmに位置した時が掻き始めとなります。

(これらの段階を踏まえてバタフライにおける「蝶々」の表現が上達すれば、うねりを徐々に小さくして抵抗の少ないオヨギを目指します。)


・・・つづく

バタフライの指導 (2-3)P.4


長時間バタフライからみた一般児童に対するリカバリー指導~

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『指導の際の主なポイント』

①水泳は水を動かすスポーツ
②腕を主体としたクロール
③“うねり”は大きく、第2キックは蹴り幅を大きく
④リカバリーの軌道は水平にしない
⑤その他細かな部分は個々のオヨギに合わせてアドバイス
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②腕を主体としたクロール

…バタフライで体を浮上させる際は、両腕両足を同時に動かして水流を床に送り、その反作用で体を持ち上げます。そこで、人間は腕と足のどちらが器用な動きが出来るか?と考えます。その、答えは「腕」であると思います。なぜならば日常生活において自由自在の動きをしているのが腕であり、泳いでいる時にその動きを目で確認することも出来ます。また、クロールを例にとると長距離を泳ぐ際はバタ足をあまり使わず、腕主体で泳いだ方が疲れにくくなります。以上を加味した場合、運動が苦手な子供がバタフライ25mを達成するには腕主体のバタフライ習得が必要だと感じています。

ただし、腕で水をとらえて強い水流を生み出すには、それが出来うる腕の動きと反復練習が必要になります。クロールの段階から先を見据えた内容の反復練習をすることで、バタフライの段階に到達した時、なるべくスムーズに理想の動きとなるよう下地をつくります。ビギナーの段階から応用を見据えた基礎を身につける、という事ですね。ですが、クロール習得の段階から腕動作のレベルを上げるために、必然的にバタ足に割く時間を削減する必要があります。私が与えられた時間は月2~4時間ですので、常に何を選択するかに迫られます。蝶々バタフライ攻略の為には限られた時間の中で適切な選択を行う必要があります。

最後に、この記事で対象となる子供は「腕の筋力はさほど期待できない」と考えたほうが良いでしょう。そこでキーポイントとなるのが腕の掻きと同時に動かす「第2キック」の存在です。これは次に説明します。

 


・・・つづく

 

バタフライの指導 (2-2)P.3

長時間バタフライからみた一般児童に対するリカバリー指導~

□2
『指導の際の主なポイント』

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『指導の際の主なポイント』

①水泳は水を動かすスポーツ
②腕を主体としたクロール
③“うねり”は大きく、第2キックは蹴り幅を大きく
④リカバリーの軌道は水平にしない
⑤その他細かな部分は個々のオヨギに合わせてアドバイス
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以上は、私が「週1で水泳をする一般児童(※1)」に対して「水面上で両腕を前方に戻すバタフライ」の指導を行う際に意識している主なポイントです。さらに、それらについて深堀りしていきます。
(※1)どちらかというと非力で運動が苦手な小学高学年や3泳法を習得した小3・4年生を意識して書いています。

上の①と②に関しては最初の泳法(クロール)を習得する段階から意識させる部分です。つまりは心構えであったり考えの土台をつくる事と言えます。非力な子供にとって①②を省いた指導をしてしまうとバタフライの段階に到達した時にいつまで経っても「蝶々」が出来ず詰んでしまいます。臭みとりやアク抜きなどの下ごしらえをせずに料理をするようなものでしょう。

①水泳は水を動かすスポーツ

…クロールでは腕で水を捉えて、それを後方に送ると体は前に進みます。立ち泳ぎでは足裏で水を床に送ると体は浮き、さらにその状態で前方にも水を送ると後退していきます。つまり、「水泳は、水を送る方向と反対側に体が進みます」。

水を掻くと水流が発生します。水流が強ければ強いほど、進む勢いが増します。水慣れ指導で、指導者が腕で強烈な水流をつくり、それを生徒に当てます。それはまるで海岸に打ち寄せる波のようなインパクトを子供に与えます。波が子供の胸にググン!とぶつかり、それが脇の間や太ももに流れて「くすぐったい」。そのような体験を与え続けると、子供は水泳というスポーツの本質を少しずつ理解するようになります。

腕や足をガムシャラに動かすのではなく、捉えた水を後方に送れば前に進むのだよ…さらにその水流が強ければ強いほどに勢いよく進んでいくのだよ…水泳というスポーツの特徴(*)をビギナーの段階で伝え、その後の練習における心構えを築く必要があります。表題に水泳は水を動かすスポーツとありますが、言い換えると水泳は腕や足で水流をつくるスポーツとなります。
(*)水泳というスポーツの特徴及び、それぞれの泳法の特徴を伝えることは習得において有効的です。

バタフライで「蝶々」を表現するには体を浮上させる必要があります。いったい、体のどの部分まで浮上すれば良いのでしょうか。それは水を掻いた時に水面上に肩が出るまで(*)浮上する必要があります。この時、水面上にチラリと脇が出ていれば充分に肩が水面上に出たと言えるでしょう。脇まで浮上させるには先ほどの「水を送る方向と反対側に体が進む」…この考えを利用します。つまり、バタフライで浮上するには腕や足を使ってプールの床に向かって水を送る必要があります。これらを生徒が理解すれば、ガムシャラ力任せに泳ぐことは無くなり、腕や足で水を「どの程度の強さで」・「どの方向」に流すかという意識が生まれます。そうすると、生徒達は腕や足をつかってプールの床に水流をぶつけるように練習し、その積み重ねがやがて体を浮上させることにつながります。
(*)肩の柔軟性があれば、肩を出す必要性は低いかと思いますが、ここで想定しているのは広く「一般児童」です。柔軟性が無いこともを想定しています。


・・・つづく